2016年7月31日日曜日

【書評】 話題本の山口敬之氏の「総理」を読んで、不安になった。

久しぶりの書評です。
今回は、元TBSの政治記者、山口敬之氏の独立後の初出版本、「総理」です。
各種メディアで話題になっておりますので、早速、購入して、この週末で読んでみました。


著者の山口氏は、安部総理や麻生大臣に食い込み、公私共に深い付き合いをしたとの事であります。この手の本にありがちな政策解説本とか批判本ではなく、「あの時、実は、こういう会話が政権幹部の間でなされていた。」と言う事実を中心に据えて書かれております。
その意味で、「そういう動きがあの時にあったんだあ。。」と知ることも多く、退屈はしません。

ただ、著者本人も自覚している様だが、「取材対象に近過ぎる。」との批判は免れ得ないと思う。
「個人的な呑み会にしょっちゅう引っ張り出されている事が、政治記者として、正しい居住いか?」
と言われれれば、ダメと言わざるを得ないであろう。
どんな人間でも、呑み友達を悪く書くことは出来ません。
それは、山口氏が如何に高い使命感を持っていたとしても、同じであろうと思う。

実際、安部総理や麻生大臣のいい面しか書いてない様に思う。
この本を読んだ人の多くは(貴公子も含め)、安部総理や麻生大臣に好感を抱くと思うが、それが、政治記者としての立場を利用した「世論誘導」と見られても、山口氏も否定できないであろう。

実際、安部総理も麻生大臣も多くのミスを犯しているが、それに関しては触れていなかったり、美談に仕上げている部分も散見されるし、政治家として指弾される問題を、「苦悩する一人の人間」として描き、問題を矮小化している部分もある。

本書の「まえがき」に、「取材対象に肉薄するというジャーナリズムの本能と機能が国民の思考と判断を支える一助となっているか?を読者に判定してもらいたい。」と書いている。
貴公子の回答は、「確かに一助にはなっているとは思うが、あくまでも非常にバイアスが掛かった見方であるので、そのまま受け入れる事はできない。もう少し客観性が欲しいので、別のソースも当たりながら、本書の内容の真贋を考える。」というモノです。

まあ一般論として、人間の考え方と言うのは、長い時間を掛けて形成されるので、貴公子も含めて、一朝一夕で、それを変えることは出来ません。
山口氏は、「取材対象に肉薄する」と言うポリシーで、今まで報道に携わって来た訳で、そうしたポリシーを大切にして欲しいとは思うが、貴公子的には、政治家同士のドロドロした人間関係に足を入れ過ぎであると思う。
「適度な距離感を保つ。」と言う事も、政治記者としては重要な要素の訳であり、その意味でブレーキが壊れているとも思う。

ただ、予想はしていたが、「日本の政治家は、ここまで浪花節の人間関係なのか?」と言う驚きは持たざるを得ない。
政治家は人間関係を大切にしていると言うが、それも程度の問題で、ここまで政治家同士がズブズブの関係だと、「正論さえも人間関係の中で、抹殺されてしまうのでは?」と不安にはなった。

P.S.
先日、やっと読み終えた、米国の超エリート家系のコークファミリーを描いた下記の本の著者のアプローチの方が、取材対象との距離感と言う意味で、安心は出来ましたねえ。。。

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