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分野:ビジネス小説、フィクション
タイトル:「JOC会長の憂鬱」
副題: コロナ厳戒下での東京オリンピック開催。その裏で蠢く国際利権と人間ドラマ
紹介:コロナウイルスの世界的蔓延で、前代未聞の大混乱をする世界を尻目に、国際スポーツ利権が牙を剥く。濁流に押し流され、次第に正常な判断力が失われていく中で、何とか理性を保とうとする主人公の心の葛藤を描く。
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1.
2021年1月某日、朝9時。JOC協会ビル最上階
日本オリンピック協会(JOC)会長の林喜朗は、協会ビル最上階の会長室の巨大の机の上に、足を放り投げて、胃薬を水で流し込んでいた。
コロナ禍で、会食自粛通達が政府から出ているのは知っているのだが、昨夜遅くに、JOCの取り巻き連中が、「五輪準備進捗報告会」と称して、六本木のVIP用の個室キャバクラを用意したとなっては、断る事は難しかった。
スコッチ、ウオッカ、バーボン、焼酎、マッコリとJOC会長らしく、全世界の酒を流し込んだまでは覚えているのだが、早朝、目覚めたときは、全裸のホステス数名とホテルのスイートルームのゲロまみれの巨大ベットに全裸でくたばっていた訳で、さすがに少し後悔をしていた。
会長室のドアがノックされ、事務総長の佐藤敏郎が入ってきた。佐藤は財務省出身の小柄な神経質な男で、大雑把な性格の林と合う訳がないと巷で噂が立っているのは承知しているが、エゲつなく官僚を押さえつける残忍さと、自分に対する強い忠誠心、そして何より、常に淡々と問題を処理する姿勢を気に入っている。
「林会長、おはようございます。昨夜は、お疲れ様でございました。」佐藤は、いつものクールかつ隙のない表情で、事務的に言った。林は内心、感心していた。と言うのも、佐藤とは、昨夜も一緒に浴びる様に呑んでいたのに、そんな素振りが全く見られないからである。
それに、今朝だって、ホテルの部屋に朝7時30分きっかりに、林を迎えに来て、ゲロまみれの部屋と全裸の林がベットにひっくり返っているのを見ても、眉一つ動かさなかった。淡々とオンナ共に、カネを握らせて追い出し、何事も無かったかの様に、ホテルのフロントに林のモーニング珈琲をオーダーする流れは、まるで、熟練した料理人の様に、正確で無駄のない動きであった。
とにかく、今は、二日酔いが酷く、佐藤の面倒臭い話を聞ける様な状態ではない。しかし、一方でこれだけ酷い二日酔いを見つかってしまっては、隠し様もない。
「朝っぱらから、一体、何の用かね? 今は、アタマが割れる様に痛いんだ。首をちょん切りたいくらいだよ。面倒臭い話なら、後にしてくれ。」林は、ぶっきらぼうに言った。オリンピック延期と言う前代未聞の難題に一緒に取り組んだこの一年で、佐藤には、最近は、同士愛まで感じている。ここのところ、会話はすべて、タメ口だ。
佐藤は、いつもの様に静かに言った。「面倒な話ではございません。ただ、今朝も愚民どもが、オリンピックを中止せよと騒ぎ立て、出入り口に群れております。ついては、本日昼の帝国ホテルでの都知事とのランチ会はキャンセルした方がよいのでは?と考えました。」
「あんな馬鹿どもは、放置しておけ。どうせ、明日になれば、電波芸人の下半身ネタで大騒ぎして、オリンピックとかコロナの事なんて、すっかり忘れている連中だよ。全く、我が国の国民教育レベルは嘆かわしいよ。」吐き捨てる様に、林は言った。佐藤は軽く一礼をすると、静かに出て行った。
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